(Preimplantation Genetic Screening (PGS))
不妊治療の現場で耳にする機会が増えた「着床前スクリーニング」という言葉。言葉だけを聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、これは体外受精において、受精卵を子宮に戻す前に「染色体の数に異常がないか」を調べる検査のことを指します。
近年、生殖補助医療の進歩により、妊娠率の向上や流産の防止を目的として注目されている技術です。医療現場では、患者様から「この検査は受けた方がいいの?」と相談されることも多く、基礎知識を持っておくことは、患者様の不安に寄り添うために欠かせないステップとなっています。
「着床前スクリーニング」の意味・定義とは?
着床前スクリーニングとは、正式名称をPreimplantation Genetic Screening(PGS)といい、2026年現在の医療現場では「着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)」と呼ばれることが一般的です。
これは、体外受精で得られた胚(受精卵)から少数の細胞を採取し、染色体の数に過不足がないかを調べる技術です。染色体の数に異常がある胚は、移植しても着床しなかったり、流産に至ったりする可能性が高いとされています。そのため、染色体の数に問題がない胚を優先的に移植することで、妊娠率の向上と流産率の低減を目指すのがこの検査の大きな目的です。
医療・介護現場での実際の使われ方・例文
クリニックのカンファレンスや医師と看護師の申し送りでは、単に「スクリーニング」と呼ぶこともあれば、現在の正式名称である「PGT-A」という用語を使うのが主流です。電子カルテのオーダー画面でもPGT-Aと入力されることがほとんどです。
- 「患者様からPGT-Aについての質問がありました。検査の適応基準やリスクについて、説明資料を渡す必要がありますね。」
- 「今回の採卵で得られた胚について、着床前スクリーニングを実施するかどうか、ご夫婦で相談する時間を設けてください。」
- 「PGT-Aの結果、移植可能な胚が確認できました。次回の周期で子宮内膜を整えて移植に進むスケジュールで進めましょう。」
「着床前スクリーニング」の関連用語・現場での注意点
関連用語として覚えておきたいのが「PGT-M(単一遺伝子疾患の検査)」や「PGT-SR(染色体構造異常の検査)」です。これらはPGT-Aと併せて「PGT」と総称されます。
現場での注意点として、この検査は「魔法の検査ではない」という点を忘れないでください。検査の結果、全ての染色体が正常であっても必ず妊娠・出産に至るわけではありません。また、倫理的な側面や個人の価値観が大きく関わる検査であるため、スタッフ側から安易に推奨することは避け、患者様自身の納得のいく意思決定をサポートする姿勢が何より重要です。
「着床前スクリーニング」に関するよくある質問(FAQ)
Q. 検査をすれば100%妊娠できますか?
A. いいえ、残念ながら100%ではありません。検査はあくまで染色体の数を調べるものであり、胚の質や子宮の状態、ご夫婦の体調など、妊娠には多くの要素が関わります。妊娠の可能性を高めるための「選択肢の一つ」として捉えることが大切です。
Q. 誰でもこの検査を受けられますか?
A. 誰でも自由に受けられるわけではありません。日本産科婦人科学会の指針に基づき、流産を繰り返している方や、体外受精を繰り返しても妊娠に至らない方など、一定の条件を満たしている場合に検討されるのが一般的です。施設ごとの方針もあるため、必ず医師の診察が必要です。
Q. 検査で赤ちゃんへの影響はありますか?
A. 胚から細胞を採取する際に少なからず胚へ負担がかかりますが、熟練した胚培養士が慎重に行うため、現在の手技では出生児への悪影響はほとんどないと考えられています。ただし、どのような医療行為にもリスクはあるため、説明文書をしっかり読み、理解した上で同意することが求められます。
まとめ:現場で役立つ「着床前スクリーニング」の知識
- 着床前スクリーニング(PGT-A)は、胚の染色体数を調べて妊娠率向上を目指す検査。
- カルテや会話では「PGT-A」という略称が使われることが多い。
- 検査は万能ではなく、倫理的な配慮と患者様の意思決定支援が何より重要。
- 現場では、患者様の不安に寄り添い、正確な情報を伝える架け橋の役割を意識しよう。
不妊治療の専門知識は難しく感じがちですが、一つひとつ理解することで、患者様の心に寄り添う力は必ず身につきます。今日の学びが、あなたの現場での対応を少しでも自信あるものに変えてくれるはずです。焦らず、一緒に頑張りましょうね。
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