(Dysphagia)
「嚥下障害(えんげしょうがい)」という言葉、病棟や介護の現場では耳にタコができるほど聞く機会があるかもしれませんね。一言でいえば、「食べ物や飲み物を、口から胃までスムーズに送り込めない状態」のことです。
単に「飲み込みにくい」というだけでなく、誤嚥(ごえん)による肺炎のリスクや、栄養不足に直結するため、私たち医療・介護従事者にとっては、患者さんの命と直結する非常に重要なサインといえます。
「嚥下障害」の意味・定義とは?
医学的には、Dysphagia(ディスファジア)と呼ばれます。口の中に食べ物を入れた瞬間から、食道を通って胃に送り届けるまでの一連の動きが、何らかの原因でうまくいかない状態を指します。
脳卒中などの脳神経疾患をはじめ、加齢による筋力低下や、神経・筋肉の病気などが主な原因です。カルテ記載では、略語で「Dys(ディス)」と書かれることもありますが、施設によってルールが異なるため、必ず所属先の申し送り規定を確認しましょう。
医療・介護現場での実際の使われ方・例文
現場では、患者さんの状態を簡潔かつ正確に伝えるためにこの言葉が使われます。特に食事介助の場面や、医師への報告で頻繁に登場します。
- 「脳梗塞後の患者さんですが、軽度の嚥下障害が認められるため、まずはトロミ剤の使用から開始しましょう」
- 「今朝の配膳時、Aさんがむせ込みました。嚥下障害の悪化が疑われるので、早めに言語聴覚士(ST)の評価を依頼します」
- 「誤嚥性肺炎の既往がある方は嚥下障害リスクが高いため、食事の姿勢には十分に注意してください」
「嚥下障害」の関連用語・現場での注意点
現場で一緒に覚えておきたいのが「誤嚥(ごえん)」と「摂食嚥下リハビリテーション」です。誤嚥は、本来食道へ行くべきものが気管に入ってしまうことで、肺炎の最大の原因になります。
注意点として、「むせ」がなくても嚥下障害である場合がある(隠れ誤嚥)ということを忘れないでください。特に高齢の患者さんは、感覚が鈍っていることもあります。最新の電子カルテでは、ST(言語聴覚士)が作成した「嚥下食の段階(食形態)」が細かく設定されているはずですので、自分の判断で勝手に食べ物を与えず、必ずその指示を守ることが、患者さんを守る第一歩です。
「嚥下障害」に関するよくある質問(FAQ)
Q. 「むせる」=「嚥下障害」と考えていいのですか?
A. むせは嚥下障害の典型的なサインですが、全てではありません。前述の通り、むせないまま気管に食べ物が入ってしまう「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」も非常に危険です。むせの有無だけでなく、食事中の姿勢や食べるスピード、食後の声の変化にも注意を払いましょう。
Q. 嚥下障害がある患者さんに、どのくらいのトロミをつければいいですか?
A. 自己判断は厳禁です。患者さんの嚥下機能に応じて、医師や言語聴覚士が「薄いトロミ」「しっかりとしたトロミ」などを指示しています。カルテや食事箋(しょくじせん)を必ず確認し、分からない場合は必ず先輩に相談してください。
Q. 嚥下障害はリハビリで治りますか?
A. 疾患や重症度によりますが、リハビリによって改善や代償手段の獲得を目指すことは十分に可能です。姿勢の工夫や、飲み込みの訓練、口腔ケアによって安全に食事が続けられるよう、チーム全体でサポートしていくことが大切です。
まとめ:現場で役立つ「嚥下障害」の知識
- 嚥下障害とは、食べ物を安全に飲み込めない状態のこと。
- 誤嚥性肺炎を予防するため、食事の形態や姿勢の指示を厳守する。
- 「むせ」がないからといって安心せず、日々の観察を怠らない。
- ST(言語聴覚士)などの専門職と連携し、チームでケアにあたる。
最初は覚えることが多くて大変だと思いますが、一つひとつの食事介助が患者さんの健康を支えています。焦らず、分からないことはその都度確認しながら、一緒に成長していきましょうね。
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